「毒」という言葉を再定義する・宮部みゆき「名もなき毒」を読みました


扁平毒水母 - 無料写真検索fotoq
photo by Changhua Coast Conservation Action


猫より出でし者、どうも @bosunekoです。

「毒」という言葉が日常に溢れていることを僕は知りました。
もちろん僕の体にも、あなたの体にも心にも「毒」があります。
「毒」という言葉について考えさせられた一冊の本について、今回は語りたいと思います。


「あの人のことうらやましいなぁ。家族がいて、仕事もあって幸せそうだなぁ。うらやましい。」
っと思ったことが誰しも一度はあると思います。
憧れという言葉でくくってしまえばそれでおしまいですが、その感情が誤った形で進んだ結果、「毒」になるということを今回僕は知りました。


憧れの毒、嫉妬の毒、恐れの毒、様々な毒が入り乱れてこの物語は作られています。
現代ミステリーと呼ばれる分野の本ですが、現実世界での日常でもありえる話しだなぁと思います。


憧れが「毒」に変わる前に一読をオススメします。

あらすじ


杉村三郎は、大手企業「今多コンチェルン」広報室で働く会社員だ。
だが通常の会社員では無い。義理の父がその会社の会長であり、妻は会長の娘なのだ。
だから、普通ではなく人からは羨ましがられる存在だ。
俗に言う逆玉である。


広報室で働いていた原田いづみは、お転婆娘だった。
いや、そんな言葉は似つかわしくない。トラブルメイカーそのものだった。
彼女自体嘘で塗り固められおり、職歴、職能、言葉など全てが嘘だった。
そんな彼女が問題を起こす。全ての対応は杉村三郎に託された。


巷では連続毒殺事件が起こっていた。毎日のようにテレビでは放映され、マスコミがバンバン記事を書く。
そんな状況の中で、殺された遺族からひょんな事から杉村は関わる事になる。


気がついたら、事件を追っていた。
いづみの問題をあしらいながら、毒殺事件を追いながら。


たどり着いた真実は、現実社会を映し出す「毒」であった。


グッとポイント


・とことん現実世界

主人公の設定から始まり、広報室、家族、事件等々現実世界を的確に描いています。
夢ではなく妄想ではなく、これこそが宮部みゆきの真骨頂かなぁって思いました。
「火車」を読んだときの衝撃を思い出します。


・「毒」というキーワード

あちらこちらにちりばめられた「毒」というキーワード。
名がつけられないほど日常生活に潜んでいる「毒」をうまく描写しています。
きっと読み終わったら「毒」の恐ろしさを実感する事でしょう。


・心理描写の鋭さ

人を作ったのは宮部みゆきじゃないかって思うくらい、心理描写半端ないです。


感想


僕らにも「毒」がある。そう結論づける事ができる。
そして僕らは必ず誰かの「毒」によって汚染されている。そうとも結論づける事ができる。


人はなぜ人を殺すのか?そんな事は今回問題にしていない。
人はなぜ人を傷つけるのか?そんな事は今回問題にしていない。
ただ様々な「毒」が存在していることをこの本では示唆している。


昔からいじめられていた、家族から虐げられていた人は必ず理想の家族を思い描く。
その理想の家族が目の前に現れたら、どう思うのか?憧れか?それとも。
自分はどう頑張って理想の家族にはなれない、それを気づくのも大人である。
そしたら最後に残る感情は「嫉妬」だけ。
「なぜ、私は苦しんでいるのに、あの家族は幸せそうなの?なぜ?」
そうやって嫉妬言う毒は体をむしばんでいく。寄生虫のように。ただただ風に舞う花粉のように、誰かの元へ向かって。


僕は気がつかなければいけない。「毒」の存在を。「毒」に汚染された瞬間を。
「毒」に汚染された時の対処法を。
病院へ行けば治るというそんな生優しいモノでは無い。
人の「毒」は伝染する。本人が意識しない間に、自分が無意識の間に。


「毒」に汚染された場合どうすればいいのか?
僕の中では、まだ答えは出ていない。ただ、気がつくだけでも大きな効力を発揮するはず。
ゆっくりゆっくり毒が体中を回る前に、気がつこう。
これしかない、そう僕は考える。


まとめ


ひさびさに小説を読みました。
なんとも重たい小説を読んでしまいましたが、だが現実的だからこそ色々考えさせて貰いました。
けして、ハッピーエンドの小説ではありませんが、現代ミステリーという分野で読み応えは抜群です。
一度、お読み下さいませ。


では、またー!

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